THE AUDIENCE
「私のファンは、同じような人々の集まりではない。色々なタイプの人々がいる。様々な人柄が見える。年齢とは関係なく」
Q:今このアルバムを聴くのは、当時原曲を聴いていた人々ではありません。自分を音楽考古学者のように考えますか?
A:いや。単にこれらの曲が好きで、繋がり合うことができるだけだ。私と同じように、人々がこれらの曲と繋がり合ってほしい。気に入ってくれるかは分からない。これらの曲の新しいファンが、降って湧いて出てくることはないだろう。そして当時原曲を聴いていた人々は、もうこの世にはいない。このアルバムがどういう人々に訴えかけるのか、私には分からない。加えて、私がステージから見る景色は、他の歌手とは違うようだ。
Q:どんな景色を見ているのですか?
A:同じような人々の集まりではないことは確かだ。簡単には分類できない人々が集まっている。スーツを着た男、ジーンズ姿の男、Tシャツとカウボーイブーツの男、スポーツコートを着ている男、イブニングガウンを着た女性、パンクっぽい女の子。色んな種類の人々がいる。様々な人柄が見える。年齢とは関係なく。エルトンジョンのコンサートで、面白いものを見たよ。少なくとも三世代の人々がいたが、皆同じに見えた。幼い子供たちですら、彼らの祖父母と同じように見えた。奇妙だった。どれだけ多くの世代から支持されているかってよく言うけど、その全世代が同じに見えたら意味ないだろう。どんな人か簡単には分からないタイプの人々に支持されて、私は満足している。ファンの年齢は気にしないけど、若い世代はこれらの曲を理解できるほど、人生経験を積んでいないだろうね。
Q:私たちAARPの主な読者層は50歳以上です。3千5百万人が購読しています。
A:その読者の大半はこのレコードを気に入ってくれると思う。もし許されるなら、一人一人に無料で渡したいくらいだ。彼らの多くは、自分を重ね合わせることができると思う。
Q:このアルバムの曲は、今や骨董品となっている、ロマンティックな愛情を思い起こさせます。しかし今日では、人々はデートしてすぐベッドへ直行します。ロマンスを妨げるものはありません。かつて40年代や50年代に人々が経験した、誰かにひっそりと思いを寄せる、甘酸っぱい想いはもはや存在していません。このアルバムの曲は、若い人々から古臭い(corny)と思われるでしょうか?
A:こっちが知りたいよ。そもそも「古臭い(corny)」っていう言葉の意味が分からない。聞いたことはあるけど、私は使わない。「ださい(tacky)」 という言葉と似ている。私はその言葉も使わない。こんな言葉は何の力も持たない。これらの曲は素晴らしい美徳の歌だ。異論は受け付けない。これが古臭く聞こえるなら、それで構いやしない。今日の人々の生活は、悪徳に満ちている。野心、強欲、身勝手さ。すべてが悪徳から生まれている。遅かれ早かれ、その悪徳の本質を見抜けなければ、やられてしまうよ。でも私たちが日々目にするのは、悪徳の魅力だ。広告用掲示板、映画、新聞、雑誌。色々な所に、人間生活の破滅とそのまね事が溢れかえっている。これらの曲は、そんなものとは全く無縁だ。ロマンスは時代遅れになることはない。いつでもそこにある。現代のメディア文化とはそりが合わないかもしれないが、まぁ仕方ないよ。
Q:失恋と喪失についてあなた書いた中で、一番気に入っている曲は何ですか?
A:「Love
Sick」かな。
Q:ミネソタの同輩、スコットフィッツジェラルドは「アメリカ人の生涯において、第二幕は存在しない」と言ったのは有名です。しかしあなたは第四~五幕まで演じています。詩人、時代の声、吟遊詩人、ロッカー、そして今やクルーナーです!
A:そうだね(笑)。でも当時は、彼が言ったことは正しかったのだろう。
Q:あなたはかつて、フォークアーティストとして、音楽業界に通用口から入ってきた、と言いました。
A:そうだっけ?
Q:恐らく当時は、フォーク音楽が成功するとは誰も思っていなかった、ということだと思います。そして今あなたは、アメリカを象徴する曲を引き連れて、グランドパレードに繰り出しています。ついに正面口から入っていく、ということでしょうか?
A:まさしく。ドアの中に入れてくれるものを、探し続けなくてはいけない。もし中に入りたいならね。人生ではときに、その日が来て、鍵を与えられても、それを放り投げてしまうことがある。生涯をかけて探していたものが、あると思っていた場所にはないことを発見する。フォーク音楽は私の人生で、丁度いいタイミングで現れた。10年後では遅過ぎただろうし、10年前では理解することはできなかった。ポピュラー音楽とは何かが違っていた。丁度いいタイミングで現れたから、私はその方向に進んだ。その後フォーク音楽は、脇に追いやられてしまった。しかし実際には今日でも、フォークは活気ある音楽の形であり、多くの人々が歌い、演奏している。他にまだ誰もいなかったときに、もしくは誰もその存在すら知らなかったときに、私はフォーク音楽へ入っていった。全ての景色を、自分のものにすることができた。そして作詞作曲に没頭していった。業火を振りまくロックンローラーにはなれないけど、業火を振りまく歌詞なら書けた。
私が幼いときは、ビリーグラハムが大人気だった。彼は当時、最も偉大な牧師であり、伝道者だった。彼は人々の魂を救った。50年か60年代に、彼の集会を数回観に行ったよ。彼はロックンロールを人格化したような存在だった。気まぐれで、次の瞬間には激変した。ヘアースタイル、声の調子、演説法、全てが嵐のようだった。雲が割れ、魂は救われた。3万か4万人の魂が救われた。ビリーグラハムの集会は、人生を永遠に変えてしまう。こんな牧師は他にいない。誰よりも前から、彼はスタジアムを満員にしていた。ジャイアンツのチームよりも、ジャイアンツスタジアムに多くの人を集めた。ずいぶん昔のように思えるよ。ミックジャガーが最初の一音を歌ったときよりも、ブルース(スプリングスティーン)が最初のギターを抱えたときよりも、ずっと前のことだ。彼は今でも、私が抱えているロックンロールの大事な要素の一つだ。私はビリーグラハムをこの目で見て、彼の話をこの耳で聞いてしまったのさ。
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