2015年8月27日木曜日

Morrissey Statement / the List of the Lost (2015.08.27)


モリッシーの小説「the List of the Lost」が、今年の9月下旬に出版されます。出版社のホームページに掲載されている、モリッシーによる概要です。期待が高まります。

URL:http://www.penguin.co.uk/books/list-of-the-lost/9780141982960/ 
掲載日:2015827

以下、筆者による訳。 


小説家に気をつけろ。彼らは知恵深く、無遠慮で、気取った予言的な態度をとる。

生身の人間が重ねる、空虚な経験。それが引き起こす、こんがらがった悲痛。結局、何一つとして満たされることはないと示している。
よってアメリカのおとぎ話では、自然な流れとして悪が善を倒し、その後誰も幸せには暮らさない。
これこそが、フィクションの定めだ。

本を読むことは、根を下ろすことだ。

真実だと認められているものと闘う、本当の真実。List of the lostはその実話だ。

2015年8月21日金曜日

Bob Dylan Interview / AARP (2015.03.23) Part 5 (Last)


THE GIFT


「一度何かに焦点を合わせたら、アイデアがやって来るまで、頭の中で奏で続ける。大抵の場合、それが曲全体の鍵になる。アイデアこそが大切だ。アイデアは私よりも、遥か昔から漂っている」


Q:最近あなたがリリースしている作品の多くは、年を取ることについて歌っています。かつてあなたは、人は引退するのではなく、消えていくと言いました。活力を失うと。あなたは今73歳で、ひいおじいちゃんです。
A:人は年を取る。情熱は若者の舞台だ。若い人は情熱的になれる。年を取ったら、もっと賢くならなくてはいけない。長らく生きているのだから、ある程度は若者へ譲るべきだ。若者のように振る舞ってはいけない。自分を傷つけることになる。

Q1966年あたりに、あなたは隠居生活を送りました。その理由は、多くの憶測を呼びました。しかしあれは、家族を守るためだったのですよね?
A:そうだね。

Q:人々はそう理解したくなかったのだと思います。アーティストとしてあなたが作り出す独特な世界観が、あなた自身がそのような人だと勘違いさせてしまいました。しかし現実には、あなたは子供を守る典型的な父親でした。
A:そう。私は自分の芸術すら諦めざるを得なかった。

Q:それは苦痛でしたか?
A:もどかしくて苦痛だった。天から授かった音楽の才能が、私をそこまで運んでくれていた。それを止めるのは辛かったけど、選択肢はなかった。

Q:そして今、あなたは生活の大半をツアーに費やしています。年間100日です。あなたのお婆さんはかつて、何かへ続く道の先に幸せがあるのではなく、道そのものが幸せだと言ったそうですね。
A:彼女は素晴らしい人だったよ。

Q:あなたを観に来る人々から、多大な喜びと心の繋がりを得られるのでしょうね。
A:世界中の試合に出ているスポーツ選手と似ていると思う。テニス選手のRoger Federerは一年のほとんどを働いている。年間250日かな。B.B.King以上だよ。人々がいる場所へ行かなくてはならない。ロスでしか演奏しちゃいけないという契約でもない限りね。しかし幸せとは幸せについて話していたよね?

Q:そうですね。
A:多くの人々が、人生に幸せはないと言う。確かに永遠の幸せはない。でも自己満足が幸せを作り出す。幸せとは、無上の喜びを感じている状態だ。例えば美味しいものを食べたとき、そのひと時は満足するかもしれない。でも次の瞬間には変わってしまう。人生は浮き沈みを繰り返す。時間は私たちのパートナーであるべきだ。そして時間は生涯の友だ。子供たちは幸せだけど、それはまだ浮き沈みを体験していないからだ。本当を言うと、私は幸せの意味すら分かっていない。個人的に、その言葉を定義できるかも分からない。

Q:幸せに触れたことはありますか?
A:誰でもあると思うよ。

Q:その幸せを維持しましたか?
A:皆、人生のある時点では維持すると思う。でも水のように、それは手のひらから零れ落ちる。苦しみがあるからこそ、人は幸せになれる。不運に見舞われた人が、どうやって幸せになれるのか?お金が人を幸せにするのか?車を30台持っていて、スポーツチームを買えるような億万長者は幸せか?何が彼をより幸せにするのか?外国に資金援助することか?この国の貧困地域にお金を使って、職を作り出すことか?職を作ることが政府の責任というのは、誤っている。職は人々が作り出すものだ。億万長者なら、それができる。貧困地区には犯罪が溢れ、今にも爆発しそうだ。辺りをふらつき回るしかない人々が、酒やドラッグに溺れ、殺人の常習犯になってしまう。そうなる前に、億万長者が彼らに仕事を与えることができたはずだ。そうすれば沢山の幸せが生まれると思う。もちろんそれは彼らの義務ではないし、私はコミュニズムについて話しているのでもない。でも金をどうやって使うのか?高潔なやり方で使うのか?高潔の意味が分からなければ、ギリシャ語の辞書を引いてみるといい。女々しいところは何もないよ。

Q:彼ら億万長者は焦点を変えるべきということでしょうか?
A:そうだね。この国には間違っていることが多々あり、貧困地区は特にそうだ。危険な土地になってしまっている。善良な人々もいるけど、職不足に圧迫されている。彼らは皆働いているべきだ。億万長者が、その数はどんどん増えているようだが、この国の貧困地区に産業を作り出すことができる。しかし誰も彼らに指示することはできない。神が導くしかない。

Q:そして生産的な仕事をするということは、ある意味では救済となりますか?自分がすることに価値とプライドを見出せるということは。
A:間違いなくそうだよ。

Q:あなたの才能について聞かせてください。舞踏家のGeorge Balanchineは自分のことを、ミューズ(芸術の神)に仕える僕だと言いました。ピカソは、自らを創造的プロセスのボスだと言いました。あなたは長年にわたり、どのように才能と向き合ってきたのですか?
A()

Q:変な質問でしたか?
A:創造性について言うなら、私はいつだってピカソの席に座りたい。自らを創造的プロセスのボスだと、私も考えてみたいものだ。自分のしたいことを、何でもできれば素晴らしい。でももちろん、そんなことはできない。シナトラのように、ピカソのような芸術家は一人しかいない。私はGeorge Balanchineと同じような考えだ。創造的プロセスを押さえつけるのは簡単ではない。

Q:捕まえにくいものですか?
A:まさにその通りだ。制御できるものではない。私の場合はまず、コンサートでどんな曲が必要かを考える。どんな曲が欠けているか。同じことを何回もやるより、自分が何を持っていないかを考える。あらゆるタイプの曲が必要だ。速い曲、スローな曲、マイナー調の曲、バラッド、ルンバ。コンサートのときには、それらを全て操る。実はここ何年間も、シェークスピアのドラマみたいな感覚を持つ曲を作ろうとしている。一度何かに焦点を合わせたら、アイデアがやって来るまで、頭の中で奏で続ける。大抵の場合、それが曲全体の鍵になる。アイデアこそが大切だ。アイデアは私よりも、遥か昔から漂っている。エジソンが使い 始めるより前から、電気が存在していたように。レーニンが占領する前から、コミュニズムが存在していたように。実際に曲を書き始める何年も前から、ピートタウンゼントが「Tommy」のアイデアを頭に描いていたように。創造性がアイデアを作り、アイデアを何とかしようとするときに、インスピレーションが必要となる。しかしインスピレーションが、アイデアを呼ぶことはない。

Q:あなたは惜しみなく質問に答えてくれました。
A:とても面白かった。最後にインタビューを受けたときは、音楽以外のことを質問された。でも私はミュージシャンだ。60年代からずっとそうだ。医者や精神科医、大学教授、政治家にするような質問をしてくる。どうして私にそんな質問をするのだろう?

Q:ミュージシャンには何を質問すればいいのでしょう?
A:音楽!それしかないよ。

Bob Dylan Interview / AARP (2015.03.23) Part 4



THE AUDIENCE



「私のファンは、同じような人々の集まりではない。色々なタイプの人々がいる。様々な人柄が見える。年齢とは関係なく」

 

Q:今このアルバムを聴くのは、当時原曲を聴いていた人々ではありません。自分を音楽考古学者のように考えますか?
A:いや。単にこれらの曲が好きで、繋がり合うことができるだけだ。私と同じように、人々がこれらの曲と繋がり合ってほしい。気に入ってくれるかは分からない。これらの曲の新しいファンが、降って湧いて出てくることはないだろう。そして当時原曲を聴いていた人々は、もうこの世にはいない。このアルバムがどういう人々に訴えかけるのか、私には分からない。加えて、私がステージから見る景色は、他の歌手とは違うようだ。

Q:どんな景色を見ているのですか?
A:同じような人々の集まりではないことは確かだ。簡単には分類できない人々が集まっている。スーツを着た男、ジーンズ姿の男、Tシャツとカウボーイブーツの男、スポーツコートを着ている男、イブニングガウンを着た女性、パンクっぽい女の子。色んな種類の人々がいる。様々な人柄が見える。年齢とは関係なく。エルトンジョンのコンサートで、面白いものを見たよ。少なくとも三世代の人々がいたが、皆同じに見えた。幼い子供たちですら、彼らの祖父母と同じように見えた。奇妙だった。どれだけ多くの世代から支持されているかってよく言うけど、その全世代が同じに見えたら意味ないだろう。どんな人か簡単には分からないタイプの人々に支持されて、私は満足している。ファンの年齢は気にしないけど、若い世代はこれらの曲を理解できるほど、人生経験を積んでいないだろうね。

Q:私たちAARPの主な読者層は50歳以上です。35百万人が購読しています。
A:その読者の大半はこのレコードを気に入ってくれると思う。もし許されるなら、一人一人に無料で渡したいくらいだ。彼らの多くは、自分を重ね合わせることができると思う。

Q:このアルバムの曲は、今や骨董品となっている、ロマンティックな愛情を思い起こさせます。しかし今日では、人々はデートしてすぐベッドへ直行します。ロマンスを妨げるものはありません。かつて40年代や50年代に人々が経験した、誰かにひっそりと思いを寄せる、甘酸っぱい想いはもはや存在していません。このアルバムの曲は、若い人々から古臭い(corny)と思われるでしょうか?
A:こっちが知りたいよ。そもそも「古臭い(corny)」っていう言葉の意味が分からない。聞いたことはあるけど、私は使わない。「ださい(tacky)」 という言葉と似ている。私はその言葉も使わない。こんな言葉は何の力も持たない。これらの曲は素晴らしい美徳の歌だ。異論は受け付けない。これが古臭く聞こえるなら、それで構いやしない。今日の人々の生活は、悪徳に満ちている。野心、強欲、身勝手さ。すべてが悪徳から生まれている。遅かれ早かれ、その悪徳の本質を見抜けなければ、やられてしまうよ。でも私たちが日々目にするのは、悪徳の魅力だ。広告用掲示板、映画、新聞、雑誌。色々な所に、人間生活の破滅とそのまね事が溢れかえっている。これらの曲は、そんなものとは全く無縁だ。ロマンスは時代遅れになることはない。いつでもそこにある。現代のメディア文化とはそりが合わないかもしれないが、まぁ仕方ないよ。

Q:失恋と喪失についてあなた書いた中で、一番気に入っている曲は何ですか?
A:「Love Sick」かな。

Q:ミネソタの同輩、スコットフィッツジェラルドは「アメリカ人の生涯において、第二幕は存在しない」と言ったのは有名です。しかしあなたは第四~五幕まで演じています。詩人、時代の声、吟遊詩人、ロッカー、そして今やクルーナーです!
A:そうだね()。でも当時は、彼が言ったことは正しかったのだろう。

Q:あなたはかつて、フォークアーティストとして、音楽業界に通用口から入ってきた、と言いました。
A:そうだっけ?

Q:恐らく当時は、フォーク音楽が成功するとは誰も思っていなかった、ということだと思います。そして今あなたは、アメリカを象徴する曲を引き連れて、グランドパレードに繰り出しています。ついに正面口から入っていく、ということでしょうか?
A:まさしく。ドアの中に入れてくれるものを、探し続けなくてはいけない。もし中に入りたいならね。人生ではときに、その日が来て、鍵を与えられても、それを放り投げてしまうことがある。生涯をかけて探していたものが、あると思っていた場所にはないことを発見する。フォーク音楽は私の人生で、丁度いいタイミングで現れた。10年後では遅過ぎただろうし、10年前では理解することはできなかった。ポピュラー音楽とは何かが違っていた。丁度いいタイミングで現れたから、私はその方向に進んだ。その後フォーク音楽は、脇に追いやられてしまった。しかし実際には今日でも、フォークは活気ある音楽の形であり、多くの人々が歌い、演奏している。他にまだ誰もいなかったときに、もしくは誰もその存在すら知らなかったときに、私はフォーク音楽へ入っていった。全ての景色を、自分のものにすることができた。そして作詞作曲に没頭していった。業火を振りまくロックンローラーにはなれないけど、業火を振りまく歌詞なら書けた。

私が幼いときは、ビリーグラハムが大人気だった。彼は当時、最も偉大な牧師であり、伝道者だった。彼は人々の魂を救った。50年か60年代に、彼の集会を数回観に行ったよ。彼はロックンロールを人格化したような存在だった。気まぐれで、次の瞬間には激変した。ヘアースタイル、声の調子、演説法、全てが嵐のようだった。雲が割れ、魂は救われた。3万か4万人の魂が救われた。ビリーグラハムの集会は、人生を永遠に変えてしまう。こんな牧師は他にいない。誰よりも前から、彼はスタジアムを満員にしていた。ジャイアンツのチームよりも、ジャイアンツスタジアムに多くの人を集めた。ずいぶん昔のように思えるよ。ミックジャガーが最初の一音を歌ったときよりも、ブルース(スプリングスティーン)が最初のギターを抱えたときよりも、ずっと前のことだ。彼は今でも、私が抱えているロックンロールの大事な要素の一つだ。私はビリーグラハムをこの目で見て、彼の話をこの耳で聞いてしまったのさ。