2014年12月18日木曜日

the Smiths Interview / International Musician (1983.10)



英国の音楽誌 "International Musician"1983年10月号に掲載された、the Smiths (モリッシー&ジョニー・マー)のインタビューです。バンド最初期の取材と思われます。二人の出会い、1stアルバムのレコーディング、音楽業界について語っています。アルバムリリース前のインタビューであり、その後の事実と相違する箇所がありますが、そのまま翻訳しています。モリッシーがギターについて語るくだりは、かなり興味深いです。
原本URL : なし
出版日 : 1983年10月

以下、筆者による翻訳。 

花々を振りかざし、エイドリアン・ディーボイ(International Musician誌の記者)につきまとわれながら、ザ・スミスがやってきた。

ザ・スミスは絶対に失敗しない。彼らはそう信じている。1976年の残骸が、その臭い吐息を振りまく中、ザ・スミスは新しい風を運んできた。爽やかな笑顔で、花を手に持ち、絶好のタイミングで現れた。魅力的でありながら少し変、そしてどこか気の抜けた音楽は、私たちを躍らせ、魂に訴えかける。

彼らは素晴らしく横柄で、彼らの意見はいつしか聴き手の意見になっている。ラブソングなど歌わず、セックスについて歌う。見た目だけ綺麗で耳障りな、巷の音楽とはまるで無縁だ。

ザ・スミスは理解し易い。彼らは私たちの言葉で歌い、一度聴いたら忘れられない曲を奏でる。文字を司り、歌うモリッシー。曲を司り、ギターを弾くジョニー・マー。ベースのアンディ・ルーク。ドラムのマイク・ジョイス。このありきたりなラインナップは、昨年マンチェスターで生まれた。

ホテルのバーでフルーツジュースを飲みながら、モリッシーとジョニー・マーは質問に答えてくれた。ザ・スミスは決して失敗しないと力説し、本誌が今まで積み上げた信頼の実績を、彼らに賭けみようという気にさせてくれた。

君はどうやって子供を連れ出し、育て上げたのか。そろそろ語ってもいい頃だよ。(“Reel Around the Fountain”の一節より。) 

J: 「モリッシーと一緒に曲を作ってみたかった。彼の噂は山ほど聞いていたし、歌詞を書いているとも知っていた。だから彼を追い詰め、一緒に23曲作った。本当に上手くいったよ。すぐに何曲も作り、レコーディングしようと決めた。そこでベーシストとドラマーが必要になった。僕はアンディを学校の頃から知っていて、今では最高のプレイヤーになっていると分かっていた。その後マイクを紹介してもらった。彼は本当にモチベーションの高いドラマーだよ。全員でスタジオに入ったとき、これはすごくなると確信した。この面子でやっていこうと決めたよ。」
M: 「とても自然な流れだったよ。奇妙だけど自然だった。最も自然に感じられることは、実はとても奇妙だ。そういうものだよ。僕らは口論したり、戦略を練ったりはしなかった。ただ流れに身を任せた。まさに完璧だったよ。」 
J:「最初に会ったとき、モリッシーと僕はどちらも、ダスティ・スプリングフィールドやシャンディ・ショーのシングル盤に対する情熱を持っていた。ピクチャースリーブに入った、最近のプラスチック板みたいなやつじゃないよ。素晴らしい演奏とプロデュースが施された、不朽の名作と呼べるレコードさ。」 

Q: 今日のザ・スミスは、あなたが思い描いていたバンドですか?
J:「まさにその通りだよ。ギターに支配されているのではなく、あくまでもメロディを生かすために使われている。このやり方はマイク、アンディの二人と、本当に上手く合うよ。アンディは驚くようなプレイをするからね。コード進行と曲名を伝えられただけなのに、彼にしかできない演奏をする。ライブバンドとしても、望んだ通りになっている。モリッシーという感情に訴えかけるボーカリストがいて、決してビートを逃さないアンディという勤勉なベーシストがいる。同じことがマイクにも言えるよ。バンドとはまさにこうあるべきだ。ソングライターとリズム隊という構成だね。」

ザ・スミスのデビューアルバム “The Hand That Rocks the Cradle”のレコーディングは終了し、トロイ・テートによって最終的な仕上げ作業が行われている。これまでに発表されたスミスの録音は、 “Hand in Glove”“Reel Around the Fountain”という2枚のシングル、そしてRadio Oneのために行った3回のセッションである。 

M:「正直に言うよ。セッションはあまり楽しくない。僕らの音楽が国中で流れることは素晴らしいよ。だけどセッション自体はあまり楽しいものではない。プロデューサーは飽きているし、スタジオに入った瞬間から、11秒が過ぎるのを気にしなきゃいけない。」 
J: 「最初にジョン・ピールのセッションをしたとき、そこの人たちの高圧的な態度にやられてしまった。でもトロイがやって来て、状況を改善してくれたよ。僕らはプロデューサーに話さなかったし、彼も僕らに話さなかった。何を言うべきか、お互いに分からなかった。でもトロイのおかげで上手くいったよ。」 
J: 「アルバム制作中も、トロイは偉大な存在だった。モリッシーと僕は曲に対して情熱的で、ベースやドラムの音を正しく録音するために、810時間も費やす。そういうときは、中立的な立場でアンディやマイクを励ましてくれる人が必要だ。僕らは車輪を持っていて、トロイはそれを動かしてくれた感じかな。スタジオも本当に良かったよ。良い雰囲気だった。ワッピング(ロンドンの東部地区)にあるエレファントスタジオさ。エアー(ロンドンの名門スタジオ)ではないけど、まぁエアーである必要もないしね。」 
M: 「究極のアルバムになってほしいよ。これからの余生、このアルバムは僕らにつきまとう。40歳になっても、このアルバムには僕らの名前が刻印されている。スタジオに入るときは毎回、そう考えて臨んでいるよ。」

君は簡単に流されやすいって人々は言う。まぁ半分くらいは正しいよね。(“Reel Around the Fountain”の一節より。) 

ジョニーのリッケンバッカーは注目の的だ。 

J: 「このギターについてはよく考えるよ。マスコミから注目を浴び始めてから、もっと考えるようになった。自分が影響を受けているものを、僕は分析したりしない。色んな人のプレイを焼き直して、自分のオリジナルだなんて言いたくないよ。」 
J: 「僕らの曲には一定のクオリティがあると思う。ギターで書かれていて、過去の音楽の歴史を受け継いでいる。僕らの曲には、フィル・スペクターっぽいもの、フェアポート・コンベンションっぽいものもある。曲を書くときは、ギターはもちろん、ストリングスやピアノのパートも想像している。ギターを完璧にマスターしたいという欲求は、高まっているよ。沢山のギターを買えるようになって、スタジオやリハーサルに割く時間が増えるにつれ、その思いは更に強まっている。」 
J: 「ギターの音色は自然に生まれたよ。ネオ・サイケデリックな音を目指していたとか、そういうことじゃない。ある日アンプをいじっていて、ちょっとベースが強すぎるなと思った。コーラスのエフェクターを使ったけど、どこか違った。だからリバーヴを加えて、いくらかプレゼンスも足した。気に入らない要素を排除していったら、あの音になったよ。ギターの音色はメロディックじゃないとね。もちろんギターは、パワフルにもリズミカルにもなれる。でも僕らのバンド編成、そして僕らの曲に求められるのは、メロディックさだよ。」 
M: 「ギターという楽器について、人々は誤った幻想を抱いている。ここ数年の使われ方は、ギターを完全に無駄死にさせているよ。 
M: 「シンセサイザーの台頭によって、ギタリストは窓の外へ追いやられてしまった。そして1979年からベースが流行り、ギタリストは再び追いやられてしまった。長時間ソロを弾き続けるような、下劣なギタリスト以外はね。でもジョニーが全て変えるよ。僕が保証する。」 

Q: ザ・スミスのレコードにシンセサイザーが登場することはありますか?
M: 「そんなことを考えても仕方ないよ。それよりはアスリートの脚とか、死について喋りたいね。シンセサイザーについては、何も言えないよ。」 

Q: モリッシーはスタジオで何をしているのですか?
M: 「飛んだり跳ねたり叫んだりそれは冗談で、僕の専門分野である声を管理している。スタジオにいるのは数日だから、あまり多くはできない。だから可能な限り完璧な形で、作品に貢献しなければいけない。それが僕の役割だ。もし何ヶ月間も使えるなら、全てを細かく分析しながらレコーディングできるけど僕らはそうじゃないからね。」 

Q: あなたの歌声はマンチェスターを思わせますね。 
M: 「自然な形にしたかった。誰が何と言おうと、僕はマンチェスターで生まれて育った。オーストラリア訛りで歌う理由はないよ。アメリカ人の真似をしても仕方ないし、僕にはボヘミアン・ラプソディなんてできない。トライする意味もまるでないよね。」 

Q: あなたの言葉は歌詞ですか? 詩ですか?
M: 「僕はジョニーの曲に歌詞を叩き付ける。それを詩と呼ぶ人もいるし、別の名称で呼ぶ人もいる。歌詞を書くときは、曲のテンポを想像しているよ。速い、遅い、中間テンポで歌詞の雰囲気が変わる。僕は沢山の歌詞を書いているよ。歌詞で埋まっている部屋もあるほどにね。」

この手を君の乳腺に触れさせてくれ。ねえハンサムな悪魔よ。(“Handsome Devil”の一節より。) 

私たちが日々気にかけていることについて、モリッシーは聡明で会話のような歌詞を書く。でも同時に、欲求不満、セックス、そして幼児虐待といった重要なテーマもつきまとう。こんないかがわしいテーマを歌うザ・スミスは、チャートとは無縁だろうか。 

M: 「チャートの中はいかがわしいテーマだらけだ。バカっぽい、というのはいかがわしいテーマだよね。でもチャートはバカっぽさで埋め尽くされている。僕らの曲はいかがわしくなんてないし、他の人にとってもそうだと思うよ。」 

Q: 大衆は「いかがわしい」ザ・スミスを受け入れる準備ができていますか?
M: 「もちろんさ。まだ慣れていないかもしれないけどね。大衆というものは、いつも浮かない顔をしている。僕らは頭を使って、賢い曲を書いていると思うよ。これが最もいかがわしいことかもしれないね。ちゃんと頭を使って書いたポップミュージックだ。とにかく僕は準備できているし、ジョニーも準備できている。他の皆も準備できているはずだよ。」 
M: 「普段レコードを買わない人々、コンサートに行かない人々に訴えかけていきたい。」

ザ・スミスは歌詞の面でも音楽の面でも、上品さを拒む。モリッシーはあなたの耳に言葉を吹きかけ、ジョニーはあなたの部屋の中で演奏している。親しみ易い一方、距離が近過ぎはしないだろうか。

J: 「ラジオで流れているような、聴き手から隔離された音楽に不満を持っている限り、僕らは誠実で触れ易い曲を作り続けるよ。何よりも僕らは、優れたミュージシャン、ソングライターとして認知されたい。僕らの曲はどれも自然に生まれくる。もちろんラジオ局はかけないタイプの曲だけどね。」

僕は君のものを笑い、あなたは僕のものを笑う。そして愛とはただの悲しい嘘だ。(“Miserable Lie”の一節より。)

Q: カルト的な成功と、大衆へのアピールをどう両立しますか?
M: 「自分の意志がいかに強いかが大事だよ。もし簡単にぐらつく程度の意思なら、ただ転落していくだけだ。どんな些細なことでも妥協したら最後、人々の関心は離れてしまう。レコードは売れるかもしれないが、誠実さを失ったことは誰の目にも明らかだ。誠実さを維持すれば、人々は信じてくれるよ。」 
J: 「妥協した途端、存在意義を失ったも同然だ。自分たちが信じる良い音楽を作って、人々に届けたい。自分の演奏をラジオで聞きたいだけなら、セッションミュージシャンになった方がいいよ。」 
J: 「誠実でありながら、成功して多くのレコードを売りたい。大衆受けもしつつ、僕ら自身が楽しめる曲を作っていくよ。中にはペダルスティール、ギター、そして声しか入っていない曲もある。もしそれが大衆受けしなかったら、今の音楽シーンがどれだけ腐っているか、ということだよ。」 

Q: 望む通りの形で作品をリリースすることは、大きな成功を収めることよりも大切ですか?
M: 「メジャーレーベルを疑問に思うのは、まさにその点だよ。僕らはアメリカのサイア・レコードと契約した。そしてラフ・トレードではレコーディング、アートワーク、その他全て、僕らが望む通りに作っている。作品に第三者の意見が入り込んでくるような契約なら、サインしないよ。」 
J: 「自分の曲が変えられてしまうなら、音楽をやる意味なんてないよ。プロデューサーによって音楽や大衆イメージが操作されるなら、もはや自分ではなくて、全く別のアーティストだよ。」 
M: 「考えうる最悪なことは、他人の意見を聞くことだ。多くの人が、その落とし穴にはまっている。人々はいつも、こうするべきじゃない、ああするべきじゃないと言ってくる。僕はもう、誰の意見も聞かないよ。聞く必要なんてないだろう。それはこのグループについても同じことだよ。僕らはやりたいことをやる。それで何かが起こるっていうのなら、それは起こるべきして起こったことだよ。」

僕は鞭をピシャリと打って、君は飛び跳ねる。でも君はそれに値するのさ。(“Handsome Devil”の一節より。)

Q: 成功することについて、どれほどの自信を持っていますか?
M: 「どうして成功しないのか、逆に聞きたい。僕らは成功を避けないし、成功を阻む要因を全く思いつけない。成功を蔑む人たちがいることは知っている。でもそれは、何一つ主張がないグループの言い訳だよ。僕らはマスコミから反発されているわけではないし、演奏する会場も大きくなっている。」 
M: 「全ては計画通りに進んでいるよ。こうなってほしいと思っていたことは、ある程度は実現した。この国中に広がるのを待つだけだよ。」 
J: 「そして僕らは本当に優れたミュージシャンになりたい。僕は19歳、アンディも19歳、そしてマイクは20歳だ。僕らは既に、最高のミュージシャンになりたいと思っている。アンディは世界一を目指している。本当だよ。」

一つになろう、太陽は僕らの背後から輝き始める。(“Hand in Glove”の一節より。)

M: 「僕らがやっていることには価値があって、この世の音楽産業、音楽シーン中で聞かれるべきだよ。可能な限り遠くまで、僕らの音楽をは届ける必要がある。薄っぺらくて、中身がないグループも大勢いる。でも最終的には彼らの名前が覚えられ、人々の唇は彼らの曲を口ずさむ。良くも悪くもね。僕たちは沢山の唇を征服しなきゃいけないようだ。」

ザ・スミスを受け入れよう。あなたは彼らの花を拒むことはできない。

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