2014年12月10日水曜日

Morrissey Interview / B92 (2014.12.10)

セルビア共和国の放送局である、B92が行ったモリッシーの最新インタビューです。モリッシーは同国首都ベオグラードで、1210日にコンサートを行いました。最後の方に嬉しい発言があります。

URL : http://www.b92.net/kultura/moj_ugao.php?nav_category=556&yyyy=2014&mm=12&nav_id=932354# 
出版日 : 2014124

以下、筆者による翻訳。  

あなたがまだ若く、周りから誤解されているとき。あなたの誠実さ、良かれと思ったことが誰にも気付かれないとき。自分を理解してくれる人は、一人もいないと感じるとき。スティーブン・パトリック・モリッシーがスミスのアルバムで書いた歌詞の中に、残酷な世界からの避難所があるかもしれない。だからこそ、多くの人々が彼を親友、家族の一員とみなし、中には神の化身と崇める人もいる。

一方で、モリッシーは常に率直で、全ての物事について意見がある。英国政治の政策、同性愛の権利、音楽シーン、またはメキシコ湾流(ガルフ・ストリーム)が大西洋の気温に与える影響まで、どんなトピックも明確かつ声高に、大衆に向けて意見を表明する。しかし皆が彼の意見に共感するわけではなく、多くの人々が反発していることも事実である。

モリッシーがポピュラー音楽の歴史において、最も才能ある詩人の1人であることは、紛れもない事実だ。今やクラシックであり、今後何十年にも渡り聴き続けられるスミスの作品、そして今なお継続中の芳醇なソロキャリアが、それを証明している。 

2006年のエグジット・フェスティバルに出演するため、モリッシーは一度だけセルビアを訪れたことがある。そして来る1210日の水曜日、今年リリースされたアルバム “World Peace Is None of Your Business”のツアーで、彼は初めて首都ベオグラードに降り立つ。この機会に、B92はインタビューを慣行した。彼が現在取り組んでいる作品、セルビアについての知識、今日のポップシーンについての意見、そしてスミスについて一言も触れない取材を受ける頻度について、聞いた。 

Q: 最近の調子はいかがですか? 
A: 僕たちの人生には何一つとして、保障されているものはない。調子が良いか悪いかは、まるで分からないよ。 

Q: 長いキャリアの中で、曲を書く方法に変化はありましたか? 
A: 全くないよ。僕は常に社会問題を扱う曲を書き、いつも人生に支配されている。人生はいかに酷いか、そのテーマから外れたことはない。僕はダンスフロアでハイになったことなんて歌いたくないだからラジオは僕の曲をかけないのかな。 

Q: もしあなたの音楽を全く聴いたことのない人が、あなたの作品に興味があると言ったとします。どのアルバムをまず薦めますか? 
A: 最近の作品かな… “World Peace Is None of Your Business” “Years of Refusal”“Ringleader of the Tormentors”“You Are the Quarry”、そして “Vauxhall and I”“Your Arsenal” “Southpaw Grammar”“Bona Drag”にも誇りを持っている。自分のアルバムを比べることは好きじゃないけど、スミスの作品よりはソロの方が気に入っているよ。 

Q: イギリスと比べて、アメリカに住むのはどうですか? 
A: 予測できる回答だとは分かっているけど、英国の天気は人々を怠惰にさせ、ロサンジェルスの太陽は、毎日を可能な限り有効に使おうという気にさせる。そもそも太陽がなければ、ベッドから出ようという気も起きないよ。 

Q: “World Peace Is None of Your Business”について、あなたの他のアルバムと比べ、特筆すべき点はどこでしょうか? 
A: いかなる意味においても、優れている作品だよ。音楽と声が完璧にシンクロしている。そして音楽シーンの中で、“I’m Not a Man”“Earth is the Loneliest Planet”“Staircase at the University”“Kick the Bride Down Aisle”“the Bullfighter Dies”といった曲たちと同じテーマを扱っているものは、存在しないと思う。タイトル曲も素晴らしいし、アルバム全体として、人々に何かを考えさせるものになっていると思う最近ではそういう作品はあまりないよね。 

Q: 今回のツアーで、セルビアを訪れるのはあなたの個人的なリクエストだったと聞いています。2006年のノビ・サド(*先述のエグジット・フェスティバル開催場所)ではどんな思い出がありますか? 
A: ひどい雨だったけど、誰も気に留めていなかった。観客はずっと歌っていて、素晴らしかったな。今回ベオグラードに来ることは、確かに僕のリクエストだったよ。ツアーで立ち寄るタイプの都市ではないかもしれないけど、素晴らしいお客さんが来ると信じている。そのためなら、ツアーで少し遠回りするのも全く悪くないよ。まぁ本当にお客さんが素晴らしいかは不明だけどね 

Q: セルビアについて、どんなことを知っていますか? ここ数十年の間に起ったことについてご存知ですか? 
A: レジスタンスがあったことは知っているし、CANVAS(Center for Applied Nonviolent Action and Strategies = セルビアの民主化組織)についても聞いたことがあるよ民主化要求運動は、いつも僕をインスパイアしてくれる。もちろん民主主義と公表されていても、実際にはそうじゃない国があることも、よく分かっているけどね。そして「民主主義」という言葉は、人々に対する武器として使われることすらある。僕はミロシェビッチの没落について知っているけど、セルビアの専門家ではない。でも僕らは何かを発言するために、専門家である必要があるだろうか。そんなことはないよね。通常僕たちに必要なのは、常識と自分自身の知恵だけだよ。 

Q: あなたは最近自伝を発表しましたね。次に計画しているのは、同じく自伝的な作品ですか、それともフィクションとなるのでしょうか? 
A: 僕の自伝に対して、人々が大きな興味を抱いたことは、かなりの驚きだったよだから今、新しいものを書いているところだ。まだ具体的な話をするには早すぎるけど、作業に取り掛かっているのは間違いないよ。 

Q: セットリストについてはいかがですか? 毎晩曲目を変えるのか、あるいはだいたい固定ですか? 
A: 人々が何を聴きたいか考えることは、あまり意味がないと思っている。だから僕は自分自身が聴きたい曲を選ぶよそうすれば、少なくとも1人は幸せにできるからね。実を言うと、曲自体はそこまで重要ではないという印象を受けることが多い観客はほとんどいつも満足しているよ。 

Q: 今日のポピュラー音楽シーンを、あなたがキャリアを開始した当時のそれと比べたとき、どのように感じますか? 
A: 未だかつて、そのようなシーンに自分が属していると感じたことはないよ。当時も今もね。興味深いことに、今週チャート1位の曲を知っている人なんて、僕の周りにはまるでいない。かつて僕らは、トップ40の曲を全て覚えていたのにね。今のチャートは、メジャーレーベルのマーケティング部門が作り上げ、観客が本当に好きなものとは関係ない。ちょうど先週テレビを見ていたら、4曲もチャート1位に送り込み、今イギリスで最も聴かれているという歌手が出ていた。でも僕は今まで、彼女の名前を聞いたことは全くなかったよ。 

Q: “America is Not the World”という曲で、あなたはアメリカを「黒人、女性、同性愛者が大統領になることはない国」と表現しました。あれから大統領は黒人となり、ヒラリー・クリントンはその地位からそれほど遠くないように見えます。あなたはこれら全てが重要と考え、どのような変化をも起こしうると思いますか? 
A: オバマの外見は黒人だが、物の見方はまるで白人だ。従って、彼の肌の色は何も変えなかったと言える。マイケル・ブラウン(*今年8月にミズーリ州ファーガソンで、白人警察に射殺された黒人少年)の事件がその証明だよ。ヒラリーは分別があり、周りをイライラさせるような人物ではないアメリカの政治家にしては珍しいよね。でも僕らは、マーガレット・サッチャーを忘れてはいけない。英国初の女性首相だったが、彼女には憎しみという感情しかなかった。イギリス人は二度と、女性をその地位には就けないだろう。変化というものは、扉を開けることもできるけど、同じように閉じることもできるよ。 

Q: 世の中で、未だかつてないほどにお金が重要になってきていると思いますか? そしてセックスこそが、この地球を動かしていると考えますか? 
A: メディアは、セックスがまるで僕たちの周りに満ち溢れているかのように伝える簡単に触れられるかのごとくね。でも僕には、現実はそうじゃないように見える。メディア上では、セックスが僕たちに手を振ってウィンクしているけど、実際はとても隔離されている。こういったこと全てが、人々を混乱させていると思う。僕らがお金に取りつかれているのは真実だけど、宇宙旅行にも取りつかれている。宇宙に行くことが僕らに利益をもたらすという証拠なんてないのにね。月が僕らに何を提供できるのかな。どうして僕らはこんなにこだわっているのだろう。 

Q: かつてあなたは、スージー・スーと “Interlude”という曲をレコーディングしましたね。どのような経験でしたか? 
A: 悪くない経験だったけど、彼女は最初からあまり社交的ではなかった。曲自体は、素敵に歌われていると思うよ。 

Q: デヴィッド・ボウイのプロデューサーであるトニー・ヴィスコンティと仕事をした人間として、ボウイの最新アルバム(The Next Day)について、あなたの意見を聞かせてください。 
A: 最初のシングルを聴いて、とても気に入ったよ。そしてデヴィッドがまた歌い始めたという事実にも、僕は好感を持った。何年か前にトニー・ヴィスコンティは、ボウイがもはや曲作りに興味を持っていないと言っていた。それはとても悲しいことだよ彼がミートボールをほじくり返すことに余生を費やすなんて。それは悲しすぎる。彼が新しいアルバムをリリースすると聞いたとき、僕は驚いたし、嬉しかった。でもあのジャケットは壊滅的だった結局アルバムは聴かなかったよ。 

Q: 80年代や90年代のバンドが再結成することに、何か意味があると思いますか? 
A: いや。人々が期待しているのは、そのバンドのかつての姿だ。だけどそれを再現するのは、無理な話だよ。 

Q: 過去の作品で、満足していない、ここは変えたい、というものはありますか? 
A: もちろんあるけど、ごくごく僅かな点だけだよ。過去の作品群には、おおかた満足している。 

Q: 最近の音楽で、何かオススメはありますか? 
A: アンナ・カルビ。彼女は素晴らしいよ。 

Q: アルバムを出したばかりですが、既に次回作の構想などありますか?
A: あるよ。新しいアルバムの曲は既に書き上げている。来年2月にはレコーディングできるといいね。 

Q: スミスについて一言も触れないインタビューはどのくらいの頻度でありますか? 
A: スミスについて言うことは、もう何もないよ。全て語り尽くされた。もはや誰も質問すらしないよ。

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