2015年4月1日水曜日

Noel Gallagher Interview / Music Radar (2015.04.04)



Music Radarという音楽機材系のウェブサイトに掲載された、ノエルギャラガーの最新インタビューです。曲作りやアレンジについて、かなり深く語っています。他のメディアと違って、ビッグマウス方面に持って行くことなく、真摯に質問しています。ノエルもそんなインタビュアーが気に入ったようで、有意義な受け答えになっています。最後の曲作りに関するコメントは、ちょっと感動的です。 (以下、つながり眉毛による訳)

出版日:2015318 
原本:http://www.musicradar.com/news/guitars/noel-gallagher-talks-guitars-production-songwriting-and-chasing-yesterday-618083 


エルギャラガーがギター、アルバム制作、作詞作曲、そして「Chasing Yesterday」を語る。  

インタビュアーにとって、ノエルは夢のような存在だ。言葉に詰まらず、何にでも意見を持つ。最近リリースされた二枚目のアルバム「Chasing Yesterday」では、ミュージシャンとプロデューサー両方の役割を演じている。こう自己評価する。 

「プロデューサー・ノエルギャラガーは、ミュージシャン・ノエルギャラガーを、怠惰なろくでなしだと思っている。」彼は言う。「こいつはもっと頑張らなきゃいけない。もっともっと頑張らなきゃいけない。深く掘り下げて、何かを獲得しなきゃいけない。ミュージシャン・ノエルギャラガーは、プロデューサー・ノエルギャラガーを天才だと思っている。ベストを尽くしているが、歯が立たないこともある。そして友達に助けを求める。やがて彼らは、良いレコードをつくるため、どこか中間地点で合意するのさ。」 

Chasing Yesterday」は彼らが2011年に打ち立てた、いくつもの強みを踏襲している。ワイドスクリーンのようなサビ、器用なアレンジ、力強い楽器編成。利口で、暗い色調の、雄大なロックと、快活なポップ。優れた提供者であるギャラガーは、熟成を続ける。

驚くべき新趣向もある。アルバム一曲目「Riverman」を美しく飾るサックスソロ。中毒的な魅力を持つ「The Right Stuff」をクライマックスに導く三人のゲスト女性シンガー。 

ツアーでデンマークに立ち寄った際、ギャラガーはMusicRadarと膝を交え、新しいアルバム、親友ジョニーマーとの共同作業、ギターとその他機材、そして「Blurred Lines」の判決について、語った。 

 

Q:あなたは「Chasing Yesterday」で、プロデューサーとクレジットされています。しかし過去の作品でも、あなたは実質のプロデューサーだったのではないですか? 
A:そうだね。このアルバムにおける僕の役割は、オアシスにおけるそれと、大きくは違わない。今までは他の人がクレジットされていたけどね。 

Q:「Riverman」のサックスソロに面喰いました。とても美しいです。20年前のあなたは、サックスの間奏をどう思ったでしょうか。 
A:面白い質問だね。これこそまさに、音楽の発展だよ。「Riverman」と「The Right Stuff」は、「Supersonic」から遠く離れている。この三曲を続けて聴いたら、尚更そう思うよ。でも今までの遍歴を辿れば、次の必然的な進歩だと思う。もし誰かが20年前に「Definitely Maybe」のセッションで「Riverman」を持ってきたら、素晴らしいと思っただろうけど、自分には歯が立たないとも考えただろう。実際に当時だったら、とても手に負えなかったと思う。」 

Q:サックスソロは別にして、今後も絶対にやらないことはありますか?例えばラップはどうですか? 
A:いいね。チャートのために、僕もラップする必要に迫られるかもしれない。だからラップの可能性は残しておくよ。今後もやらないのは、トースティングかなぁ。ジャマイカのラップみたいなやつだね。あれはないな。そしてヘビーメタルもない。速弾きはない。絶対にない。 

Q:現在ブラスセクションと合唱団を引き連れてツアーしていますね。70年代のストーンズみたいです。 
A:その通り。僕も彼らに負けず劣らずの一文無しになるよ()


直感を信じること 

「自分の曲が完成したときは分かる。正しい状態に到達したら分かる。第六感を持っているのさ。」 

 

Q:何曲かで女性ボーカルを起用していますね。「The Right Stuff」は、セルジオメンデスのような雰囲気です。 
A:わぁ、ありがとう。褒め言葉として受け取るよ。 

Q:あなた以外のボーカルを入れる考えは、いつ浮かんだのですか? 
A:こんな流れだよ。全ての曲は、僕がアコースティックギターで歌うところから始まる。だいたい飲み込めてきたら、曲のペースを掴むため、クリックに合わせてデモを録る。それを何回も何回も聴く。シャワーを浴びているとき、家にいるとき。いつでも聴く。そしてスタジオに入ったら、自分の本能に従うだけだ。 

そうやって曲ができていく。どんなことでも起こりえる。「The Right Stuff」では、高音部は僕には高過ぎて、低音部は低過ぎた。「女の子を入れるのはどうだろう?」と思った。もっとエキゾティックになるしね。次に「バスクラリネットはどうだろう?」と思い始めた。その曲に取り組む数日間で進化していくのさ。

何時間もかけて一インチしか進まないときもある。反対に、一瞬で大きく飛躍する曲もある。いずれにせよ、最終的に曲が仕上がればいい。それが重要だ。僕は、自分の曲が完成したときは分かる。正しい状態に到達したら分かる。第六感を持っているのさ。でも他人の曲は別だ。他のアーティストの制作に携わることもあるけど、曲が完成したかの判断はできない。自分の曲なら、聞いたら分かるけどね。 

Q:あなたは電気洗濯板の奏者としてクレジットされています。何回聴いても、そのような音は聞き取れません。どの曲で演奏したのですか? 
A()。もうその努力は止めていいよ。あれは単なるジョークだ。 

Q:えっ? 
A:英国のマスコミに向けて書いた。奴らは全員ろくでなしだからね。僕が何の靴を履いているか、誰と出かけるか、朝食は何か、どこのバーに行くか。そんなことを知りたがる。馬鹿馬鹿しいよ!だから奴らは「あなたは電気洗濯板を演奏していますね」なんて言ってくる。「本当に?本当にそんなものが聞こえるっていうのか?マジでバカだな!」って返してやるよ。 


ジョニーマーとの共同作業 

「彼がスタジオでまず初めに弾いたフレーズが、レコードで聞こえるフレーズだ。あの男はまさに魔術師だよ。」


Q:まんまと騙されました。「電気洗濯板」をグーグル検索したら、本当に実在するようですね。 
A:そのようだね()。君には本当のことを言うよ。僕は君が気に入った。もし英国のジャーナリストだったら、そんなこと構いやしないけどね。でも君のことは気に入った。恥をかかせるようなことはしないよ。」 

Q:ありがとうございます。偉大なるジョニーマーが「Ballad of the Mighty I」で演奏しています。彼に弾いてほしいことを、何かリクエストするのですか?それとも彼がやることを、黙って見守るのですか? 
A:奇妙だけど、彼はレコーディングまで絶対に、バッキングトラックを聴かない。どんな曲か、全く知らない状態でやって来る。何のキーで、どんなジャンルなのかさえ、事前には何も知りたくないみたいだ。僕には一言も喋らせない。でも僕は「まぁ、それならそれでいいか」という感じだった。 

僕自身ではうまく表現できなかった部分を、彼のために残しておいた。ジョニーには何もリクエストしなかった。でも神に誓ってもいいけど、彼がスタジオでまず初めに弾いたフレーズ、レコードで聞こえるフレーズだ。ファーストテイクじゃないよ。でも構成やアイデアはそのままだ。彼ならこう弾くのではないかなと、想像していた通りのプレイだった。美しかった。あの男はまさに魔術師だよ。天才だ。 

Q:あなたはジョニーのギターを二本持っていますね。一本はツアー中に壊してしまったと聞きました。 
A:そうだね。彼のギターを弾いていた夜、観客の何人かが暴れて、ステージに上がり込んできた。愚かな奴らだ。そのギターは壊れてしまった。でもジョニーはもう一本くれた。今でもまだ持っているよ。時々引っ張り出して弾いている。僕には少し重いけど、美しいレスポールだよ。 

Q:そのことについて、ジョニーにも話を聞きました。あなたにギターを譲ったのを、酒のせいにしていました。今はもう全く飲んでいないようですが。 
A:僕にギターをくれた理由は、もはや関係ないよ。彼があのギターを取り戻すことは絶対にない。彼からフェンダーのストラトも買ったよ。そのギターで「Don’t Look back in Anger」を書いた。レコーディングにも使った。更にもう一本、彼から借りているものがあるかもしれない。それが何であれ、彼が取り戻すことは絶対にないよ() 

Q:もしあなたが誰かにギターを譲って、彼がそれを壊してしまったら、また代わりをあげることはありますか? 
A:そうだね。その人物が、僕と同じくらい紳士で良い奴だったらね。 


エフェクターの力

「ビッグツリーズというクリーンブースターを使っている。シグナルエンハンサーみたいなものかな。素晴らしいよ。」  

 

Q:「Chasing Yesterday」には10曲が収録されています。アルバムから漏れてしまったのは、何曲くらいですか? 
A:僕は最低でも、2530曲を準備してからスタジオに入る。通常は、核となる曲が五つくらいある。絶対にアルバムへ収録されるタイプの曲だ。その五曲を中心に試行錯誤して、アルバムの流れやペースを決めていく。でも今回は、その五曲の中から三つしかアルバムに入らなかった。残りの七曲は、アルバムには収録されないと思っていたものだった。 

作業が進むにつれこのアルバムは、もっとリラックスした、多様な要素を含んだ感触になっていった。そして僕は「The Right Stuffをここで使って、Ballad of the Mighty Iをそこに入れよう」と思った。セルフプロデュースだと、いかに自分を楽しませるかが、キーになると思う。デイヴサーディなら、「The Right Stuff」は止めようと言ったかもしれない。何か別の曲が、代わりに収録されていたかもしれない。でも僕はいつでも、自分の直感を信じるよ。いつでもね。 

Q:ポールステイシーの役割を教えてください。彼とあなたのギターを聞き分けるのは難しいです。 
A:まず「Riverman」のサンタナみたいなソロだね。いや、サンタナとピーターグリーンが交差している、と言った方がいいかもしれない。「The Girl with X-Ray Eyes」のデヴィッドボウイみたいなソロもそうだ。そして「The Right Stuff」のソロ。あとは全て僕だよ。

ポールは素晴らしい。本当に素晴らしいよ。僕たちは座って、よく一緒にソロを考える。僕はとにかく沢山のソロを弾くけど、すぐに飽きてしまう。「こりゃダメだ。納得いかない」となる。そこで同じ音のセッティングで、彼にギターを渡す。トラックを流して、彼が良いフレーズを弾くたび、テープを止める。「このフレーズは最初に持ってきた方がいいな」とか議論する。そうやってソロの流れを構築したら、全体を一発録りしてしまう。 

Q:あなたは今まで、多くのギターを使ってきました。今回、何か新しいものを導入しましたか? 
A:ほぼ全編で、ナッシュの63年製ストラトを使った。素晴らしいよ。同じくナッシュの、茶色の72年製テレデラックスも使った。これも最高だね。もちろんギブソン355も使った。そして新品のマーティンD-28。まるで50年代に買ったような音がする。

他にはあるかな?カスタムのハイワット50ヘッドと、新品のハイワットヘッド。フェンダーのブラックフェースデラックス。どれも最高だよ。ストライモンのエフェクターも大量に使った。ビッグツリーズというクリーンブースターを使っている。シグナルエンハンサーみたいなものかな。素晴らしいよ。全てのギターテイクで使ったよ。見た目も最高だ。


似ている曲について

Blurred Linesの後に、もう一つの曲も聴いた。でも何で連中がそんなに言い争っているかは、分からなかったよ。」 


Q:まさかアナログテープで録音しているのですか?  
A:さすがにそこまで徹底はしていないよ。全てのスタジオ機材はヴィンテージだけど、テープマシンだけは実用的じゃない。 

Q:「Blurred Lines」の判決について、どのようにお考えですか?あなたはかつて、「Step Out」にスティーヴィーワンダーをクレジットしましたね。  
A:「Step Out」のサビが、彼の「Uptight」に似ているのは明らかだった。だから僕は周りに助言を求めた。そのアドバイスに従っただけさ。 

Blurred Lines」の一件で話題になっている、マーヴィンゲイの曲は聴いたことがなかったよ。そして実際に聴いたら、何もかも「Blurred Lines」そのままだった。カウベルの音もそうだね。 

Q:メロディに限らず、音楽的な土台についても似ていますか? 
A:リズムを著作権保護できるのか、という話になると思う。もしそうなら、レゲエのアーティストは、全員困ったことになる。この件について詳しくは知らないけど、僕は今まで二回も印税を諦めた。一回は歌詞で、もう一回は音楽で。どちらも「何でもいいよ」って感じだったけどね。まぁこういうこともやらなきゃいけない。 

ポピュラー音楽は50年代から続いている。そしてこの世には、36種類のコードしかない。ときには誰かの足を踏んでしまうこともあるよ。そして裁判員に逆らうことはできない。Blurred Linesの後に、もう一つの曲も聴いた。でも何で連中がそんなに言い争っているかは、分からなかったよ。 

Q:昔と変わらず、曲作りは簡単ですか?誰でも若いときは、感情の爆発を経験します。でも年を重ねると、責任が増していきますよね。 
A:「Isle of Noises」という良い本がある。30人の英国ソングライターにインタビューしている。ジミーペイジ、ポールウェラー、ポールマッカートニー。実は僕もインタビューされたよ。それからレイデイヴィスかな。曲作りについては、全員が異なる考えを持っている。ルールはない。何一つとして、不変じゃない。

僕も昔ほどには曲を書かなくなった。四週間で15の素晴らしいアイデアが浮かんだ後、半年間何も浮かばないこともある。でも特に心配はしない。どの道、15のアイデアのうち、レコードに採用されるのは二つくらいだ。量より質だ。心配しないよ。 

誰かが僕の部屋に入ってきて、「これで終わりだ。君にはもうこれ以上、一曲も書けない」と言ってきたとする。でも僕は「Live Forever」を書いた。「Rock ‘n’ Roll Star」「Champagne Supernova」「Don’t Look Back in Anger」「Riverman」、そして「Everybody’s on the Run」も書いた。それで十分だよ。でも僕は作詞作曲を続ける。曲を書かないことに対する恐れじゃない。単に好きだからね。曲作りが今でも大好きなのさ。